よく行く老舗の人気トンカツ屋がある。
昔から古いけれど美味しく安い。
「いらっしゃ~い。ひとり?
いつものでいい?カウンターにお願いね」
おばあさんのかすれた声を聞いたあと
お決まりな新聞を手に取り
小さなすり鉢で胡麻を擦りながら
メンチカツとトンカツが入った定食を待つ。
何年も繰り返した景色だけど
最近この店にも改革の風が吹いた。
店の店主は息子と厨房にいて
母親が外を担当していたけれど
ある日からおばあさんの姿が無くなり
息子のお嫁さんらしき人が
接客を担当することになった。
お嫁さんはおそらくどこかで接客を
仕事とされていたんだろう。
忙しい時間には行列もできるこの店を
どんどん捌いて回していく。
すごく仕事ができるんです。
動きにキレがあるし
お茶も無くなる前に必ず注がれる。
後ろに目が付いてるのか!ってぐらい。
おそらく店の売上にも
プラスの影響があっただろうと
簡単に思えるほどの活躍だった。
数ヶ月が過ぎて
少し店の空気が変わり始めた。
「いらっしゃいませー。
お一人様ですか?ゲスト1名様です!」
「Order、ランチone頂きました!」
「ありがとうございます」(全員で)
こ、こちらこそぉ~。
・・・・
いやね
いいんです。いいんですよ。
気持ちがいいし。不快感はまったくありません。
活躍により発言権が高められた
お嫁さんの改革の成果なんでしょう。
「大盛り」が「W(ダブル)」に
変更されたとしても
奥のトイレが奇麗に清掃されてる事は
大いに喜ばなくてはいけませんからね。
頑張ったんだよね。
時代がツルンとしたキレイな球体のような
気持ちよさを求めている。
コンプライアンス遵守。
おばあさんも若い人にやっと任せられると
ニッコリ微笑んでいるかもしれませんね(笑)。
あのままであった時に思う事。
こうなってから思う事。
それぞれなはずです。
そう。この引っかかりは
僕の癖なんだ。
代わりに失われる「古き良き」と言われる何かを
僕らの親の世代と同じように
寂しく感じてしまう年齢になっただけ。
フラッシュでもかつて
効率を求める風潮を嫌い
非効率な自分を良しとした替え唄を
たくさん作ったね。
当時のままでは時間が確保できず
多くを削ぎ取った今のヴァナに
復帰して最大効率を感受している僕なんですけど。
今見てみると言いすぎだったと反省していたりしています。
何がいいかなんて分かりません。
善し悪しは時代で廻るものですから。
僕の子孫の時代では
地球温暖化の中
効率の行き着いた先に
もう、石斧持って
裸で仕事をしているかもしれませんね。
いいなぁ・・・。
※想像図